阿育王
大光院良海
王は佛法を信ずる餘り僧を纒ふて佛陀の四霊蹟なる降誕地北迦毘羅城外ルンビニ園、成道地佛陀迦耶、初転法地鹿野苑、槃涅地拘尸那伽羅を巡拝し一々塔婆を建立し、其の遺業を刻し、寺塔の荒廢を修築せり。王の卽位十七年、目犍連子帝須を上首となして一千人の比丘を集め二百七十日に亘って佛典の結集を行はしめたり。經律論の三説パーリ語を以て筆録せり。この書經に依りて佛法の布教師多く天竺全土はもとより、シリヤ・パレスタイン・フェニキヤ・エジプト・マケドニヤ・キレーネ・ペルシヤ・ビルマ・馬來半島等に流通せしめたり。王は罪人を赦し、殺生を禁じ、阿育王の半生は誠に我等が僧侶の教導に永久なる遺徳あり。
正平元年二月七日 花押
三身院秘藏覚書 第一巻
魔神山三身院寳物洞に秘藏せる書巻の總ては應永元年に老朽甚しく御眞書多く朽果にけるに、末代の為に消滅せるを憂て茲に三霊山修験宗法印等は集議し、書㝍せるに古來の御眞筆の保存を究して持寄りの□樽及び竹筒等に炭粉を入込めて朽るを留めて納藏せり。苦心さながらに復元せる書巻も然なり。
應永二年十月四日
修験宗法印講
大光院明雲房
三身院秘藏覚書 第二巻
- 鳥羽僧正猿□蛙絵巻 一巻
- 上宮太子十七條戒文書 一巻
- 役小角仙人諸山登踏書 二巻
- 唐小摩仙人諸經書 二十七巻
- 舒明天皇御染書 一片紙
- 止利佛師諸像刻見取図 十二巻
- 用明天皇御染書 二巻
- 推古女帝御針図 二巻
- 髙賀茂系譜 一巻
- 修験宗諸法教典書 二十五巻
右は在倉安全にして最も大事とせるに一番樽は開くを禁ずるものなり。
應永二年四月十一日
大光院明雲坊
三身院法藏洞御遺物控
皇祖賜繼天羽羽斬剱 一振
青黄赤緑紫長圓曲玉 一首
八角金銅鏡 一
金龍唐獅子兜鎧 一式
等身如來五佛像 五座
等身四天王像 四立
半等身菩薩像 十立
二脂身座主觀音像 三十三
刀剣 若干
経菅経樽 五
渡來神佛像 若干
渡來土器 若干
明應元年四月四日
大光院明雲坊
三身院法藏洞図解
平面、本殿、泉、行者殿、空穴、盗防柵、大鳥居、外陣、断面、四天王座、五佛座、大石戸、石戸、経管、行者殿、役小角墓、二王座、石戸、留水、
此の図極秘にして外見を禁ずる。
應永二年七月一日
大光院阿闍梨 明雲坊
施主堂図
巌鬼山、行来川、安藤舘、藤咲舘、施主堂、施主松、北
正平元年六月十二日
西縁
修験宗戒律覚書
修験宗は世界諸民族の信仰なる神佛の總を摂取し、眞理を究め一如に諸教諸行を修成するにあり。過去に現今に未来に智を向上し倍養せしむを大旨とする修験宗は、過去に判断し現今に改め未来に達成を願ふる人間の心及び修練を一如として誠の幸を得る為の大宗なり。無常なるを現實ならしむるは諸民族の種性階級を除き、現實に究むを大志とするは修験宗なり。
應永二年一月三日
大光院明雲坊
修験宗戒律覚書
- 諸行の験は無ならず、達成の基なり。
- 飛ぶ鳥をうらやまず、我にも翼を造るべし。
- 人の手は諸器を使ふるにあり、便利の器を造るべし。
- 人の眼は暗に見えざると思ふべからず。
- 人の心は神佛に等しく、惡魔に等し。
- 昨日に悔なく、今日に勤め、明日に望むべし。
- 神佛に崇め、神佛に便るべからず。
- 病は身にあり、亦心にあり。
- 我れ得ずとも傳へよ、得るは我に基あり。
- 大海を渡るは人なり、天空に飛ぶも亦□□□。
人間智に至りて得られずとはなし。
應永二年五月四日
大光院明雲坊
修験宗眞理文
役小角仙人は人間なり。我等亦人間なりせば釋迦も何人ぞ。修験とは聖に達せんとするに大要あり。役小角仙人もかく教傳せり。諸行の總て人間の創りしことなれば、求めて得られずとはなし。鍬を造り稲を稔らしむも人間なれば、子々孫々に至るまで人間に未智なるは解け、凶作なりとも飢ゆるなき世ぞ至るなり。是れぞ世に名ぞ殘るはなしとも、誠の聖者なり。
應永二年八月一日
大光院明雲
西光寺図
源氏林、上人寂滅之地、馬捨盛、西光寺、中野川、北、正中山、大釋迦
西光寺図
正平元年六月十二日 西縁
東日流寺社廻図
龍飛崎、權現崎、増川岳、十三港、砂山、大藏岳、魔神岳、鳴戸崎、舞戸崎、巌鬼山、白神岳、赤藏山、□頭山、國末崎、旭山、龍頭崎、恐山、波止港
東日流寺社廻図
南北部五社廻図
應永元年五月一日
修験宗先達
西念坊心海書
西海、国末山、大藏岳、増上山、權現崎、十三港、十三砂山、龜丘、法藏堂、桑畠、法明寺、泉、石化崎、唐港、林崎、不二崎、施主寺、行来川、舟打、正中山、飛鳥山、三宝洞、魔神山、世門北、東内海、東日流検非違使庁、八頭山、入寂地、西光山、行丘、赤神岳、柵峯、藏舘、矢楯峠、八代岳、巌鬼山、白神岳、土崎、觀音寺、米代川、八森、姫神山、焼走山、厨川柵、雫石、仙岩峠、払田柵、泰平山、八龍、寒山、羽打湖、河辺、角舘、眞言岳江刺、遠野、善明寺、早池峯仙
奥州東日流、北方、東方、安藤領、龍飛崎、權現崎、義經寺、相内、安藤舘、増川岳、中里、沼泥、尾別、源氏郷、觀音川、内濱岬、東海、阿弥陀川、飛鳥郷、大藏岳、三宝院、法藏山、勢至川、報身院、世門北、獄島、喜羅□地、泉崎、大光院、不動川、魔神山、唐沼、法身院、正中山、荒□□領、大釋迦、石化崎、海孝崎、東日流検非違使庁、十三港、龜丘、十三砂山、沼崎、車崎、舘丘、西海、七里濱、舞戸、津刈領、古野、法藏堂、姥蔦島
十越□、桑畠、港、妙法堂崎、中島、川村、行来川、不二崎、安藤領、施主寺、林崎、藤咲沼、大浦、八穗田、沖舘、北中野、上人墓、馬捨盛、西光寺、行丘、外濱、八頭山、東丘、藏舘、平賀、巌鬼山、大童子
魔神山に登るは迷路多く…
魔神山に登るは迷路多くして、修験宗法師を案ぜねば三身院にたどること難し。法藏洞は大宝辛丑年以来の寳倉なれば、落石のからくりあり。盗心起せば巨岩に身を埋むあり。役小角仙人の法罰たちどころに降る也。抑々魔神山とは、東方飛鳥山、西方石塔山、南魔岳及び正中山の連峯あり。北方は大藏岳ありて山また山の中に圍まれたる人踏不斧の大森林山にして、日中尚暗き秘境なり。されば此の仙境に信心求道のために
入らむと欲せば、先づ正中山應身院に登りて修験宗の秘密灌頂を得ること第一なり。次に石化山大光院にて仙境しるべ及び仙關通踏赦を得て修験宗阿闍梨として入道し、不動瀧及び藤の瀧にて行をなしべし。されば法身院の笹山石塔山に入るを赦さるゝなり。更に報身院なる鉄鉢盛に入峯して、茲に三年の修行道を経て三身院に入るを赦さるゝなり。
保元二年十二月一日
覚脱房書花押
修験宗魔神山秘聞
魔神山、石塔山、正中山、飛鳥山、秘封鳥居、法藏洞、不開門、瀬戸川、三身院
みちのくの
くにの末なる
のりの峯
とはにつきせぬ
聖の脚跡
天平二年四月一日
安倍忠重書花押
魔神山法藏窟しるべ
石塔山、魔神山、法藏窟、三法印
八月十五夜、南方石塔山にかゝる頃、三法院の影至る折に老木あり。その木影至る所法藏窟也。
文明五年六月 雲仙法印
経殿、三世諸佛殿、阿閦、藥師、大日、弥勒、弥陀、釋迦、本殿、岩戸、内陣通、行者殿、不開戸、外陣通、飛鳥川上、密岩戸、道場
大宝辛丑天造魂
養老元年十二月
空梅・大祥、完遂。
魔神山法藏窟
正平元年六月一日
西縁
京師図
大内裏、琵琶湖、勝林寺、大原、東塔谷、叡山、三井寺、延暦寺、無動寺、園城寺、大津、逢坂関、音羽山、牛尾山、山科郷、國分寺、笠取山、鞍馬寺、小野郷、愛宕郷、鹿ケ谷、黒谷、鏡山、東山、六波羅、稲荷山、貞觀寺、栗栖郷、深草郷、賀茂川、京師、伏見、鳥羽郷、石原郷、物集郷、葛野郷、山田郷、小倉郷、川島郷、嵐山、大岡郷、石作郷、西山、淀、男山
九字呪文
呪印
臨兵闘者皆陣裂在前
矢印の數順に九字を唱へて空に線を張りて術考しべし。
修験宗極秘文字
大光院藏
文治二年五月 尋覚
修験宗念佛講覚書
建保元年京師より金光房圓證、三身院に飛鳥山を越え川添に来る。念佛本願を修験宗正中山阿闍梨忍亥坊に説きて以来、辛苦五年。行丘に入滅せるに彼の往生説、誠に修験宗の法印等に感銘し三身院に祭るを決せり。金光坊とは修験宗元祖役小角の再現に等しく、茲に念佛往生の法を修験宗に一巻に留め、末代の為に金光房殿の一切書巻を三身院寳物洞に秘藏し奉る也。
應永二年五月十七日
大光院明雪坊
摩訶如来 空星書
修験宗本尊に本地垂跡の二尊あり。本地とは佛道にして大日・弥陀・藥師・阿閦・釋迦五佛の修成せるを一尊とし、諸佛智慧を加味して天地金剛不壊摩訶如來と號けたり。垂地とは日本神道を佛道に總合して人心の迷を断つ為に忿怒に象現し、號けて金剛藏王權現と稱し本地垂跡二尊何れも宗祖役小角仙人が大峯山に感得せし本尊也。
文治二年十二月十八日
石化山大光院にて