沙門金光巻物

南無阿弥陀佛
南无勢至菩薩
南无観世音菩薩
願奥州皆淨土
祈天下泰平
沙門金光

建保乙亥神無十七日 花押

乃至十念の信心、無疑なれば、一切の邪道に侵さる事無し。
末法念佛獨明抄
南无阿弥陀佛 花押

戒之事

此の經は必ず失ふべからず。
 心信を等閑にせず肝に銘じ
魂に銘して能く保つべし。
 末法念佛獨明抄は生死一大事の
血脉にして釋迦牟尼佛の
 験行眞實正傳なりと信じてよし。
西天唐土の佛典を金光が
 二十餘年に度りて選抄し
正法を審らかに易く修成し、
 金光が一代に盡せるかぎりを皆盡し、
茲に得たるは末法念佛獨明抄なり。
 安心立命の起證は生縁娑婆に盡きて
終命の到る刻は諸佛諸天の
 來迎に預り、西天佛土に往生を受けにし、
智愚平等の易道は念佛の他に
 本願の道しるべも無く、諸行の中にも猶
彼岸の悟に遠し。況んや
 念佛本願は善哉、行は一念にても
往生し乃至十念猶むなしからず。
 罪は十惡五逆の者も、おこしがたき道心
を發しては往生せんと證せり。
 女人の身は五障三従として諸行の
中に救済の致し所なきにしも、
 念佛本願の摂取不捨なる弥陀なれば、
念じて成せずと云事あるべからず。
 本願に乘ずる事は信心のふかきに
依るべし。弥陀に九品あるは、
 一念は十念に足ぬべしとの意なり。
愚鈍の身になして往生を
 受けにし易道は念佛の本願に
依る他に悟り難し。
 金光が生涯を此の一經に通して
末代の為に正法實相安心立命の
 覚證として書遺し、永世に本願を
守護し我も人も往生極樂に
 成道せんが為に盡せるところなり。
是は我名の挙に非ず。
 たゞ衆生皆往生の為なり。
釋迦牟尼佛は涅槃に入りて
 往生極樂を示し給ふ。
諸行無常是生滅法
 生滅滅已寂滅為楽
是の詞を了ってみてば
 釋迦牟尼佛の在世に明らけく
往生安樂の悟を得たるなり。
 此の經は佛祖の大悟に親近し、
念佛を盡して往生を得る為の
 大方便なれば永代に保つべし。
若し失ふことあらば、
 東西南北に隠るとも佛法の
守護神四天王の為に重き科を
 受くなり。夢々忘るべからず。
南无阿弥陀佛
南无釋迦牟尼佛

花押