飯積盛衰史第三
記 修験宗之事
役小角仙人
寛永廿年五月四日
大光院仙明坊花押
再筆明治四年二月
長三郎
記
役小角仙人吾らが飯積郷は古代より稲作及び諸々の智識に富めし村なり。日本の北方に豊けき平地を山麓に三方を防風し、水利に難なく、都落ちの聖や落武者は安住地として幸の源を開き、代々その習得に依りて飯積は栄たり。
大宝年間之飯積図
砂畑入江、狐鼻、二子盛、泉入江、石田、石化崎、石畑、皆瀬入江、泉崎
建保年間飯積図
正平二年飯積図
狐鼻、城邸、大房、沠立、泉、石田天正十六年飯積図
狐鼻、高楯城、上村、大坊、下村、復泉、飯積、山子、石田
寛永廿年飯積図
川代、狐鼻、平松、朝日、城跡、舘下、傳介、神明、山子、大宮、福泉、石田、大坊
笹山図面｜正中山図面
尼池
壷化山図面｜魔神山図面
石塔山図面
修験宗霊場図面
合浦、正中山、弘法山、法隆山、尼池、法喜山、大光院、大泉院、笹山、魔神山、立法山、壼化山、飛鳥山、石塔山、赤不動、霊仙、青不動
養老元年七月、唐小摩是開
伊津水門田道將軍墓｜魔神山役小角墓
大宮山、大典山、御成山、味僧ヶ村
精霊洞
魔神山麓、東南面方、断面、瀧、平面
道しるべ漂石、文治二年七月作洞
天誅洞
平面、西北面方、断面、盗侵からくり、正中山麓
天正四年十月作洞
天眞洞
壼化山麓、道しるべ標石、平面、北西面方、断面、盗侵からくり
文明十三年作洞
三身洞
石塔山峯麓、道しるべ標石、北東面方、盗侵からくり、平面
養老元年六月作洞
秘密行法場
笹山麓、湧泉藥湯泉、修験三昧行場、湧泉若返泉、湧泉不老泉
泉庄
百姓邸、地頭邸、獄邸、倉邸、非人邸、馬市道、大泉寺、武家邸、北
大坊庄
大光院、僧侶邸、大工邸、百姓邸、参道、武家邸、北
石田庄
百姓邸、代頭邸、北
福泉庄
仙夫邸、馬喰邸、代頭邸、百姓邸、北
飯積庄
城邸、武家邸、百姓邸、傳使飛脚邸、北、正行寺、検非違使庁
飯積拓田畑暦
川代田、砂畑、アワ、石畑、米、皆瀬、泉、福泉、石田坂、朝日、石田、飯積、山子、景日
壼化山鬼庭
石塔山、曲樹林、秋冬之瀧
修験宗祈禱所にして、古來此の山中に踏入る事を禁ぜし秘峯なり。
飯積町領下村
飯積町、大坊─八幡─山𤰹、朝日─奥田─出戸
石田─立花、影日─矢楯、福泉─南辰─北辰
泉─皆瀬─盛越、山子─寺村─澤目
沠立─上村─下村─岩村、味僧─御成─宮沢
川代─金山─若山─戸沢─石田坂─平松
馬姓─米田─吹𤰹─惡戸─唐笠─石𤰹─一坪
領村人數
赴人二百十六人、夷人四百三十七人、平民六百八十三人、僧侶百三十一人
應仁二年現調書より
飯積高楯城図
南辰、南丸、神笠、東丸、本丸、天守、西丸、北辰、北
正平六年五月十日築成
城主萬里小路景房
飯積町略暦
- 大寳二年、役小角開村
- 建保三年、金光房興村
- 正平二年、藤原景房築城領主
- 文明十二年、天眞名井宮幸坐
- 天正十六年、飯積依戦乱敗崩
- 慶長元年、代官所配從
- 寛永十年、飯積組二十七村之頭村相成
- 元禄二年六月、髙楯城旧臣解罪
- 享保元年、神社寺院旧所復興
- 元治元年四月、依天内一族請討幕
志士四十一人上洛、皆殉國
以上、天眞名井覚書より㝍筆
長三郎
大光院下寺
大光院、報身院、法身院、應身院、梵場寺、正行寺、大日堂、大泉寺、精霊洞、天眞洞、三身洞、天誅洞、四天王洞、阿弥陀堂、西院堂
飯積都落者士族書
- 一、京師之落人
- 斉藤氏一族─鳴海氏─太田氏
- 相馬氏一族─對馬氏─笠井氏
- 和島氏一族─竹林氏─毛利氏
- 佐藤氏一族─和田氏─木村氏
- 天内氏一族─天坂氏─江良氏
- 一、土佐之落人
- 朝日氏一族─樺澤氏─中野氏
- 北屋氏一族─松野氏─中村氏
- 阿部氏一族─越屋氏─賀谷氏
- 中屋氏一族─平山氏─今氏
- 新岡氏一族─三浦氏─船水氏
- 一、大和之落人
- 其田一族─坂本一族─岡田一族
- 神一族─濱舘一族─佐々木一族
- 一、鎌倉落武者
- 和田一族─奈良一族─長峯一族
- 光村一族─寺田一族─菊地一族
- 前田一族─山田一族─片山一族
- 一、木曽落武者
- 小野一族─三上一族─髙橋一族
- 柳原一族─山口一族─上見一族
- 葛西一族─東山一族─多田一族
- 一、洛外落人
- 當道一族─平小路一族─土岐一族
- 一條一族─北條一族─大給一族
- 一、鎭西落武者
- 五十嵐一族─小田桐一族─田中一族
- 野宮一族─小野田一族─三橋一族
- 外崎一族─戸田一族─嶋屋一族
- 鈴木一族─野呂一族─村上一族
- 一、甲州落武者
- 乳井一族─髙杉一族─田口一族
- 一、羽州移住人
- 工藤一族─木村一族─嶋村一族
- 花田一族─川村一族─相原一族
- 飯田一族─津田一族
- 一、夷人系住人
- 金丸氏─井丸岡─宇藤氏
- 丸山氏─奈良岡─津田村氏
- 原氏─大丸屋─獅田氏
右は天正の乱に死滅せるも今日尚その姓を稱するは皆一族の血脈に依るなり。
長三郎調書
天正之乱戦場跡図
髙楯城、七舘合戦、原子、巌鬼川合戦、港、尻無合戦、太刀村、金神城合戦、屍沼、盛残合戦、馬撃、惡戸合戦、金山、狐鼻合戦、馬性、長者盛合戦、松木、砂𤰹合戦、白旗、大坊合戦、大光院、十三港合戦、新城、油川、貴羅夷地合戦、小田川、勝、敗
乱敗飯積旧臣、移羽州、築飯積
天正十六年五月、依飯積領主之命、羽州土崎郡秋田兼季殿は當に髙楯城旧臣老人・女子供密逐電せしむ。今日其臣は飯積村を築きて栄ふ。亦、髙楯城殉戦之霊、皆土崎郡松原輝像山補陀寺の藤原永代墓に霊祭奉り候。
天眞名井宮墓築行丘
正中山、天ヶ平、天眞名井宮新墓、源常平、北中野川、金光墓、義仁旧墓、行丘城、源氏平
愢昔筆止
嘆々一千年古村飯積、愢昔筆止
長三郎花押
注告
此の書は秘書なりせば徒らに他見に及す勿れ。
亦、復書するべからず。後世大事に藏保し門外不出とせよ。
明治四年十二月一日
長三郎花押